RECYCLE Greatest Hits of SPITZ  スピッツらしさとの戦いの歴史

RECYCLE Greatest Hits of SPITZ

RECYCLE Greatest Hits of SPITZ

 どんなに色々なジャンルの曲、バンドを聞いていても、ふっと気付くとまた何度も聞きたくなってしまうバンドが僕には二組あります。
一つがMr.Children、そしてもう一つがスピッツです。


『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』は、僕が初めてスピッツを聞いたときのアルバムで、今年でもう十年の付き合いになるんですね〜。ミスチルを聞き始めたのもちょうどその頃で、初めて自分のお小遣いでCDを買った時期なので思い入れがよりいっそう深いのかもしれません。
 このアルバムには、『Crispy!』の「君が思い出になる前に」から、『フェイクファー』の「楓」まで、スピッツの中期のシングル曲を網羅したものとなっていて、シンプルながら非常に聞きやすい一枚となっています。


 実はこのアルバム、本人の意志を無視した形でレコード会社が勝手に発売したものらしく、今では販売中止となっています。(代わりに2006年のデビュー15周年にそれまでのシングル全てを前期と後期に分けて『シングルコレクション』として発売。けど、これも「ベストアルバム」ではないとこがミソ。)
CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single CollectionCYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection

 けれど、僕は後に出たシングルコレクションよりもこのリサイクルの方が好きなんだな〜。コンパクトに名曲がまとまってて全く無駄がない。最後が「楓」で終わるのもなんともいえない余韻を残してくれてとてもグッド。スピッツファンの人なら知ってると思うんですが、スピッツはリサイクルの後に出した『ハヤブサ』からものっすごく曲の雰囲気が変わってロック・テイスト全開になるんです。

ハヤブサ

ハヤブサ

世間一般に思われている印象からとは違うんですが元々、スピッツは自分達の事を強くロック・バンドとして意識していて、それなのに、「ロビンソン」や「チェリー」のヒットによって自分達がポップ・バンドとして認識されるのに非常に苦痛を感じていた・・・らしいです。

前述の通り、そのイメージを『ハヤブサ』で思いっきりぶち壊してくれるんだけれど、つまりこのリサイクルというアルバムは、スピッツがわりかし自分のやりたい音楽を好き勝手していた初期と『ハヤブサ』以降の色々な迷いを振り切って純粋にやりたい音楽をやるんだ!って境地に達した今に至るまでの間の、スピッツの試行錯誤の総まとめ、みたいなアルバムになっているんだな、図らずとも。もっとぶっちゃけていえばスピッツがお客さんに媚売って猫かぶってた時期のアルバム、ともいえるかもしれないw

 
 ちょっといきなり話は変わるんですが、小学校の頃、国語の授業でこんな文章を読んだことがあります。

有名人の伝記というものはその人の家族や友人など身近な人が書くよりも赤の他人が書いた方が面白い場合が多い。なぜならそれはその人の事をよく知っている人が伝記を書くとどうしてもその人の思い出が文章の中に入りこんでしまうからだ・・・。

 スピッツのリサイクルも正にそんなアルバムだと思うんですよね。全く知らない人が作りあげたスピッツらしさ溢れる作品・・・。それは、確かに本人の意向を無視したものだったのかもしれません。けれど、結果的にあのアルバムはスピッツが苦しんでいた「自分らしさの檻」という存在を明確にしてくれた、と僕は思うんですよね。だからこそ、リサイクルはものすごいセールスを叩き出すし、スピッツは次のアルバム、『ハヤブサ』であれほどの鮮やかな変身を遂げることが出来た・・・まあ、僕の勝手な思い込みかもしれないんですが、このアルバムがファンの間では戦術の経緯もあっていまいち不評みたいなんでちょっと弁護してみようかな〜、と。
これから、スピッツを聞いてみようと思ってる人はまずはこのアルバムから聞いてみといいと思いますよ。多分TSUTAYAではまだ普通に借りられるはずですので。