戒能プロとの考察 その4 大生院と石鎚山について

前回の記事でも触れましたが、立先生のブログで戒能プロの出身について次のように書かれてました。

15.01.13

戒能プロは生まれが松山で3歳から石鎚山付近で高校から大生院です。

なかなか細かい設定ですね。そこで今回は石鎚山および大生院について簡単にまとめつつ戒能プロとのつながりについてざっと書きなぐってみました。


石鎚山愛媛県にある標高1,982mの西日本で最も高い山です。日本七霊山の一つともいわれ、昔から修験道のとても盛んな山でした。またも修験道…もはや咲-Saki-といったら修験道みたいな感じになってきましたね。
そして大生院愛媛県新居浜市にある地名ですね。かつては往生院村と呼ばれていたのですが、「往生」の字が死を連想させるという事で現在の大生院という名前に変更されました。
この往生院という地名の由来は、現在もこの地に存在する正法寺というお寺が往生院とも呼ばれていた事にちなみます。この正法寺の創建は奈良時代にまで遡り、その開基は寂仙(上仙)という人物です。
この寂仙については『日本霊異記』に次のような面白い記述が残されています。

伊予国神野郡に石鎚の神を祀る山がある。険阻な山で、修行した清浄な人しか登れない山だとある。寂仙という禅師がこの山で修行し、人びとから菩薩と崇められていた。寂仙は天平宝字二年(758年)、自分は死後二十八年目に国王の子として生まれ変わり、神野と名づけられるであろうとの遺言を残して死去した。その二十八年後、桓武天皇に皇子が生まれ神野親王(後の嵯峨天皇)と名づけられた。それで人びとはその王子を寂仙の生まれ変わりと信じた。*1

また『文徳実録』によると神野親王と同じ名前である事を憚って神野郡は新居郡に名前を改めたとの記述もあって、これが現在の新居浜の地名の由来と言われています。つまり、新居浜市大生院もどちらも元々の名前から変更された地名なんですね。これは別に何の関係もない話ですけど、「往生」院の開基である寂仙に神野親王へと「転生」した逸話があるって面白いなって思ったり。

ところで上の大生院の名前の由来や寂仙の逸話と、戒能プロのカードの背景が賽の河原である事や二つ名がThe Spook(幽霊、お化け)である事、つまりこれらの全てがこの世のもの以外のものを指し示すキーワードである事は全くの無関係ではないのかなと思ったり。別に具体的に能力に関係あるとも思いませんが、そういった地名を学校の場所として立先生が選んだような気はすごくします。テスカトリポカは神様でしたが、戒能プロはそのうち悪霊とか幽霊とかも呼び出しちゃったりするんでしょうか…。

正法寺に話を戻しますね。正法寺笹ヶ峰の麓にある寺院で石鎚山笹ヶ峰、そして瓶ヶ森を加えた3つの山は伊予の三高山とも言われています。現在の石鎚信仰の中心地はその名のとおり石鎚山なのですが、かつては笹ヶ峰瓶ヶ森の方が信仰が盛んであったとも言われているそうで、この笹ヶ峰別当正法寺でした。現在でも正法寺では七月に「笹ヶ峰お山開き」と呼ばれる行事が行われており、笹ヶ峰の本尊である蔵王権現像を正法寺から山頂まで担いで持っていくそうです。

これらの情報が戒能プロと何らかの関連があるとして他にも上で挙げたキーワードから連想される咲-Saki-キャラが何人かいます。一人は毎日のように吉野の山を駆け回ったことで蔵王権現の能力を身につけたという阿知賀の大将である高鴨穏乃です。

戒能プロは生まれは松山なのに3歳から石鎚山へ移り住んだようですが、彼女もまた同じように山で修行する事で*2現在の能力を身につけた、あるいは磨き上げた可能性は十分にあるように思えます。いくら厳しい修験道の修行を行ったところでテスカトリポカを呼び出せるようになるとは思えませんが…。

また永水のメンバーと戒能プロにも共通点を見出すことが出来ます。永水の子たちは修行を積んでいたら本家から呼び出しがかかって現在の霧島神境へと移り住んだ訳ですが、戒能プロが生まれは松山なのに3歳で石鎚山へとやってきたのも全く同じような理由なのではないかという気もするんですがいかがでしょうか。なにより戒能プロは永水の滝見春とは従姉妹の関係にあたりますしね。

ただ、高校時代の戒能プロは永水とは違ってセーラー服姿だったので、大生院高校は永水みたいな特殊な学校という訳ではないのかなぁ…。大生院がある笹ヶ峰には石鎚信仰の古い姿が今も残っているというのは、霧島神境が霧島神宮を隠れみのとした存在である事とダブって見えなくもないですがさすがにこのあたりに関しては仮説を立てるにしても情報不足すぎますね。

参考文献

山と信仰 石鎚山

山と信仰 石鎚山

生活のなかの行道(ぎょうどう)―石鎚信仰の深層

生活のなかの行道(ぎょうどう)―石鎚信仰の深層

参考サイト
石鉄山 正法寺
何の変哲もない咲の地名紹介 : 愛媛県代表・大生院女子と戒能プロ

*1:著:森正史『山と信仰 石鎚山』p.18より引用

*2:シズは修験道の修行をしていた訳ではないですが