咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A 最終話[軌跡] 感想 その2 阿知賀の残りの2人についてと咲-Saki-のこれからの軌跡

感想その2と書いてますが、前回の感想を読んでなくても差し支えないです。今回の記事では、前回は触れなかった阿知賀の2人についてと本編の主役、咲さんと和についてです。前回の感想は書き上げるのに相当苦労したので、今回はあまり深く考えずに思った事をつらつら書いてみようと思います。

  • 新子憧


憧ちゃんは阿知賀編を通してシズの一番の親友であり、理解者でもあり、かつラストでのシーンに象徴されるように阿知賀編はシズと憧ちゃんと和の3人の物語という側面が結構あると思うんですが、和やシズに比べると彼女があの時に何を思って行動したのかはっきりしない場面が多いですよね。例えば1話だけでも彼女は阿太中に進学して阿知賀に戻ってくるという大きな決断を2度もしてるんですが、その時の彼女の心情はなんとなくでしか推測出来ない訳です。
「憧」とう名前の通り、彼女は内心では結構シズや和に対して憧れに近い感情を抱いているのは多分間違いないですよね。じゃなきゃ、一度飛び出した阿知賀にあんなにあっさりと帰ってくる訳ないし、彼女の麻雀の打ち筋や中学になってからの髪型とかちょっと和を意識してるのかな、という気がしなくもないですし。

ちょっと話はずれるんですが、個人的に残念だったのは憧ちゃんが個人戦に出場しなかった事ですね。トップレベルの環境に身を置きたいが為に親友のシズや和と別の学校に行く選択をした彼女の事。阿知賀に戻ってきたのはいいとして、個人戦に出場すらしないのはちょっと納得いかないかなぁ…と。憧ちゃんだけちょっと悩んでる素振りだったし彼女なりの考えがあったとは思うんですが、その辺りは是非本人の口から聞いてみたかったところ。
まぁ、メタ的に言えば個人戦に出場しなかった事も彼女のエピソードが少ない事も仕方ないとは思うんですが、本編で描かれる決勝では是非憧ちゃんのシズに対する熱い思いを存分に語ってほしいですね。

  • 松実宥

前回の記事で書いたように、阿知賀編はメインキャラがいかに過去や別れを克服するか、がテーマとしてある訳ですが、恐らく阿知賀編の登場人物の中で最も辛い境遇にあったのは宥姉だと思うんですよ。彼女は母親を幼い頃に亡くし、阿知賀こども麻雀クラブにも通えなかったし、しかもあの極度の寒がりの体質だからまともに友達も出来なかっただろうし、そもそも小学校の頃とか学校にちゃんと通える事が出来たかどうかすら怪しいところですよね。けど、そんな彼女が何かを思い悩んでいるシーンというのは作品の中で全くといっていい程描かれませんでした。

ドラマCDを聞いてみると私生活では玄ちゃんがものすごくしっかりしている一方で宥姉はものすごいダメダメなんですが、精神的な部分ではこの関係が完全に逆転していて玄ちゃんが宥姉を頼っている部分がものすごくありますよね。*1また、奈良県大会を突破した直後のクラスメート達のあの歓迎っぷりを見ると恐らく宥姉は学校でも慕われているみたいで、これってあの体質を考えると相当すごい事だと思うんですよね。
憧ちゃんとは別の意味で彼女もあまり内面が語られる事の無かったキャラクターですが、彼女が過去において何を考え、どんな経験を積んで今の境地に至ったのか、というのは中々気になる所です。

  • 原村和

ここからは予想という程のものでもないですけど、これからの咲-Saki-の軌跡を考える上で重要な和と咲さんについてちょこっと。

シズ達と再会した時と、今回のこのシーンと和の珍しい表情を続けて見る事が出来たんですが…ちょっと思ったのがこのワクワクした感情が和の場合、マイナスに作用する事はあるんじゃないかな、という事です。
和がこれまでの試合で背負っていた感情って団体戦の決勝は初めてだとか負けたらみんなと離ればなれになるとかそういったマイナスのプレッシャーの感情ばかりでした。けど、今回は決勝に行けば子供の頃の友人たちともう一度麻雀を打つ事が出来るというプラスのプレッシャーな訳で、この感情が逆に和にのどっちモードになる事を妨げたりしたら面白いかもしれないな、と思いました。2回戦でものすごく思わせぶりな事を部長が言ってましたし。

まぁ、最後まで地味にプラスっていうのも和らしいといえばらしいのかな、とは思うんですけどねー。


衣ちゃんのこのセリフは1巻での咲さんと照お姉ちゃんの会話とほぼ同じですね。少し前に、衣ちゃんの記事を書いた時に、彼女のキャラクター造形は「海底撈月」から創られているという話をしましたが、同じ事は咲さんにも言えるのかな、と思っていて彼女にとって「嶺上開花」という役は単なる得意技にとどまらない彼女の未来そのものを暗示しているのではないか、と最近考えています。
森林限界を超えて嶺の上で咲く花…「咲く」という言葉は元々、笑うという意味の言葉だったそうです。だから、咲-Saki-というタイトル、そして「嶺上開花」という役名には強いライバル(あわあわやシズ)や辛い過去(照などの家族間の不仲や金角ちゃん(仮)との間に起こった何か)を乗り越えて咲さんが大会を勝ち抜きお姉ちゃんと仲直りして笑顔を取り戻す…そんな意味もこめられているのではないかと思います。
阿知賀編のテーマが過去や別れを乗り越える事であるならば、それが咲-Saki-本編にも受け継がれている可能性は高いと思うんですよね〜。

*1:一見しっかりしてるけど精神的にはもろい玄ちゃんと、一見すごくだらしないんだけど中身はすごくしっかりしてる宥姉。2人はいい姉妹関係ですね。最近流行りの宥菫のカップリングも同じような関係性と言えるでしょうか。