WANDS PIECE OF MY SOUL
WANDSは時期によってメンバーが違うんだけど恐らく中山美穂と共演した「世界中の誰よりきっと」や「時の扉」などのヒット曲が産み出された2期のイメージが一般的だと思います。その2期の3枚目のアルバムにしてボーカル上杉さんとギターの柴崎さんの最後のアルバムがこの『PIECE OF MY SOUL』。間違いなく邦楽ロックを代表する傑作です
WANDSは時代によってその音楽性もまた常に変化させてきたけどこの作品はそれまでの売れ筋ポップと上杉の志向するロック・オルタナティブがぶつかり合って出来た奇跡的なアルバムです。歌詞は全体的に陰鬱。同時代の同じ傾向のアルバムとしてはMr.Childrenの『深海』が思い浮かぶが、桜井の歌詞が当時の世相を反映して社会への不満をぶちまけたり皮肉ったりしてるのに対して、上杉のそれはあくまで自分自身の心の闇や不安に深く潜りこんでいく。恐らくこの当時から事務所が求める音楽性と自らのそれとのギャップに苦悩していただろう事が随所にうかがえて興味深い
シングル曲の「世界が終わるまでは・・・」や「Secret Night〜It's My Treat〜」はもちろん云うに及ばずアルバム表題曲「PIECE OF MY SOUL」や「FLOWER」、「Foolish OK」などやはりロックテイストの曲に素晴らしい曲が多いのだが、やはりアルバムのラストを飾る「MILLION MILES AWAY」を一番のお勧めに挙げたいと思う
この曲の歌詞は正に上杉の未来を暗示しているようだ。夢追い人が、粉々になったガラスのように自分も他人も傷つけながらそれでも白い旗を上げることなく一人きりで歌い続けよう・・・と上杉が壮大なメロディーと共に歌い上げる様子はまるで彼自身の決意表明だ。事実、このアルバムの後に2枚シングルを出した後、上杉はWANDSを脱退し、自らの音楽を追い求めて邦楽の表舞台から姿を消したのである
※補足。なんか変にかっこつけて書いてるけど上杉さんは現在もソロで活動していて、別に引退とかはしてません。ただ、かなり雰囲気は変わってしまったらしいけど・・・
