[読書] ローマ人の物語 パクス・ロマーナ 

ローマ人の物語 (14) パクス・ロマーナ(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (14) パクス・ロマーナ(上) (新潮文庫)

パクス・ロマーナ完読。ここでは、カエサル暗殺後、アントニウスとの後継者争いに勝利したアウグストゥスこと、オクタヴィアヌスがいかにローマを共和政から帝政へ移行させていったか、それがここでの骨子となります。



>>この巻の主人公になるアウグストゥスは、第Ⅲ巻に登場した人物の中でもひときわ生彩を放っていたスッラのように痛快でもなく、第Ⅳ・第Ⅴ巻を通して圧倒的存在を誇示したカエサルのように愉快でもない。(中略)しかし、それでいて私は、彼の生涯と業績を追っていた間、一度として退屈したことはなかった。この男は、三十三歳で戦場に出る必要がなくなってから七十七歳で死を迎えるまでの長い歳月、別の意味の戦争を闘いぬいたのだと感じたからである。

ユリウス・カエサルの言葉の中で、私が最も好きなのは次の一句である。
「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」
こうは思いながらもカエサルは、指導層の中でも才能に恵まれた人々には、見たいと欲しない現実まで見せようと試みたのではなかったか。(中略)しかし、このカエサルから後継者に指名されたアウグストゥスは、目標とするところは同じでもそれに達する手段がちがった。(中略)アウグストゥスは、見たいと欲する現実しか見ない人々に、それをそのままで見せるやり方を選んだのである。ただし、彼だけは、見たくない現実までも直視することを心しながら、目標の達成を期す。

これが、アウグストゥスが生涯を通して戦った、「戦争」ではなかったかと思う。
天才の後を継いだ天才でない人物が、どうやって、天才が到達できなかった目標に達せたのか。それを、これから物語ってみたい。<<

そして、そう、これはカエサルという天才の後をいかに秀才アウグストゥスが辿っていたかという物語でもあります。


彼は、もう慎重に慎重を重ねて、すこーしづつ改革を成し遂げていきます。三十三歳ですでに絶対的な権力者になっていながら、ですよ?すごい自己制御力と忍耐力ですよね。彼の生涯を見ていると、なんとなくその生き方が徳川家康とだぶって見えるのは僕だけでしょうか?彼もまた、形は違えど、信長と秀吉という二人の天才の後、日本を支配しましたが、政策は多くの部分を秀吉のものをそのまま受け継いだ、ということらしいですね。「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」なんかはアウグストゥスも実際いいそうな言葉ですしね。

さて、次の巻ではティベリウスからネロまで帝政初期を彩る皇帝たちが登場します。その題名も「悪名高き皇帝たち」、アウグストゥスがつくりあげたローマ帝国はどうなっていくのか、また次が楽しみです。